vol.2 salbot 恭子さんとフランス地方料理のおいしい関係
- この方にお話をうかがいました
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料理家・salbot 恭子(さるぼ きょうこ)さん
料理家の叔母に師事。2000年春に渡仏、数々の名門校に学び、パリの一流ホテル「オテル・ド・クリヨン」勤務。帰国後は上野万梨子氏、有元葉子氏のアシスタントを務める。料理教室を中心に多方面で活躍。
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フランスの家庭料理・地方料理を軸に、季節感溢れる料理を作り続ける女性がいます。フランス屈指のホテルで料理人として勤めた経験もある彼女が、家庭の料理にこだわる理由は? 料理家であり、二児の母でもあるsalbot 恭子さんに、その魅力と基本の「フランス地方料理」を教えていただきました。(写真/中本浩平)
- 「フランス地方料理」との出会い
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フランス修業時代、料理学校での修学を終えたサルボさんは、パリ・コンコルド広場に建つ由緒あるホテル、「オテル・ド・クリヨン」に勤務しました。当時2つ星のメインダインニングのキッチンとパティスリーは、本場で学び働くことを志す者にとって最高の現場。芸術的な料理と質の高いサービス、調理場でともに働き、互いを高め合い、暇さえあれば料理談義に熱中する仲間たち。そして、そんな仲間と過ごす濃密な時間の中で、サルボさんが感じたのは、彼らの故郷に対する誇りと深い愛情でした。どんな高名なシェフも、故郷の料理や家庭の味を語る時には、目が輝く……。
「食文化の原点は、家庭料理にある」。以前からそう信じ続けてきた思いは、フランスの日々で確信へと変わります。
- 「フランス地方料理」の良いところ
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サルボさんが作る料理は、家庭的な手の温もりと、表情豊かな自然が、お皿の中で仲良く同居しているかのようです。
「フランスに限らず、地方料理はその風土に最も適した素材選び、調理法、保存法までを知ることができます。農業大国であるフランスであれば、地方料理すなわち農家の家庭料理といえるでしょう。朝、畑に出る前にストーブの上に鍋をかけて出かけ、一日煮込んだものを夕食にしたり、乳の出なくなった家畜を屠(ほふ)り、その肉・骨・血や脂まで食べつくしたり。そんな先人の知恵が詰まった料理は、とても理にかない、経済的でひとつも無駄がないのです」「私が見聞きし、舌に記憶した家庭料理をお出しして、笑みがこぼれたならば、こんなに嬉しいことはありません」。 - 左/友人が集まる、なごやかな食卓。気取らない素朴な料理ばかりでも、最高のおもてなしができる。
- 「フランス地方料理」とのつき合い方
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「ひとつだけスパイスを使ってみたり、肉を塊で煮てみたり。そんな簡単なところから始めて、料理の味を楽しんでいただきたいと思います」。
フランス人の旦那さま、サルボさん、子どもたちで暮らす一家にとって、フランスの地方料理は、和食同様に、普段から親しんでいるもの。家族の定番料理です。
季節ごとの煮込み料理も多く、そのおいしくなっていく音を聞きながら、時の経過を楽しむことも、しばしば。鍋を覗き込む子供たちとの会話や、家族でひとつの鍋を囲む、食卓のひと時が、サルボさんに温かさと豊かさを運んでくれるのだそうです。
「まずは、臆せずお作りください。特別な食材をすべて揃えなくても、立派な道具がなくてもできるものです。家庭料理なのですから。」
- fin.
- わが屋の「フランス地方料理」ことはじめ
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地方料理を作りたいと思ったら、まずはひとつだけ、その土地の食材や調味料を使ってみましょう。サルボさんのオススメをご紹介します。比較的入手しやすく使いやすいものから、
1.塩/「フルール・ド・セル(塩の華)」を料理の仕上げに添えてみる。
2.油/「ノアゼット(ヘーゼルナッツ)オイル」や「クルミオイル」を、Ex.V.オリーブオイルやサラダオイルと共に常備して料理に合わせて使い分けると楽しい。
3.酢/「シャンパンビネガー」や「シェリービネガー」なども使い分けると料理の幅が広がる。少し変わったものでは、写真右の「グレース・ド・キャナール」。鴨肉のコンフィを作る時に欠かせない、この鴨脂の瓶詰めを、じゃがいもやきのこを炒める時に使うと、ぐっと風味が増すのだそうです。