vol.3 佐々木京美さんと「石窯」のおいしい関係
- この方にお話をうかがいました
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料理家・佐々木 京美(ささき きよみ)さん
福井県鯖江市の里山で「パン工房 野の花」を営む。自家製石窯で作ったパンや料理を通して「おいしさ」と「カラダが喜ぶ食」を探求。自然と、人との繋がりを大切にしたシンプルな暮らしを送る。
»プロフィール »ブログ「野の花の暮らし」
福井県の里山で、自家菜園の野菜づくりや石窯を使った料理づくりを通して、カラダと心が喜ぶ「おいしさ」を探求し続ける佐々木さん。石窯と向き合うことで、料理をじっくり楽しむコツが見えてきたのだそう。石窯には、不思議な力があるようです……。
- 「石窯」との出会い
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福井県の里山で、自然の力を生かした、おいしくて、カラダが喜ぶパン作りを続けている佐々木さん。石窯を使い始めたきっかけは、20年来の知人である陶芸家・伊東さんとの再会。同じ頃、偶然にも石窯に関心を寄せていた伊東さんが「京美さんが使うなら」と、石窯を製作してくださったのでした。最初に作った料理は、石窯カンパーニュ、ジャガイモ・カボチャ・ズッキーニの丸焼き。パンの素材は、小麦粉・塩・水・イーストのみ、野菜はそのまま放り込んだだけ。なのに「驚くほど、おいしい!」。石窯から現れた食べものたちの、力強い味と香りに圧倒されたそうです。「この感動を沢山の方に味わってほしい」そんな思いが、佐々木さんの工房の原点になっています。
- 右/石窯で焼き上げたパンは、存在感たっぷり。「その表情と味の力強さに圧倒されます。シンプルに、しみじみおいしい」
- 「石窯」の良いところ
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石窯と石窯から生まれる料理に「なにか根源的な魅力を感じる」という佐々木さん。当初は、火加減・焼き加減が難しく、手間のかかる石窯に戸惑ったものの、徐々にそのクセを掴むことで楽しみを見いだしていったそうです。「石窯は、素材の善し悪しを素直に表現します。例えば、すね肉やテールのポトフ。肉は柔らかく、野菜は形崩れせず、アクも出ません。鶏の丸焼きなら、皮はパリッと、中はジューシー。パンは香り高く、粉の旨味を最大限に引き出してくれる」「スイッチポン! とはいかない部分を、自分が負うというのは、自分の中で退化した何かを研ぎすますことかもしれないなあ〜、と思ったりしています。道具を使いこなすほど、自分に足りないものが見えてくる。昔の人のすごさや智恵も伝わってきます」
- 薪のはぜる音を聞き、火の状態を見て、石窯の熱を感じ、食材が焼ける香りをかぎ分けて…。
- 「石窯」とのつき合い方
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「薪は樽材を使っています。何十年もかけて大きくなった木が樽になり、何十年もかけてお酒をつくり出し、役目を終えた時、再び木に戻り、石窯を温めてパンをつくり出します。ちなみに、その灰は自家菜園の畑にまいています」
薪の熱が内部に伝わるまで約6時間、そこから窯の内部が適温になるまで1日がかり。年2回の煙突掃除は、息子さんと旦那さまが担当し、月に一度の火入れ時には、余熱を利用してハムやポトフを作ったり、コーヒーを焙煎したりしているそうです。
「石窯と出会ってから、じっくり、ゆっくりと物事に取り組めるようになったかもしれませんね。私がやっている石窯も、料理も畑も、そのどれもが一本の糸で繋がっているような気がします。」
(佐々木さんが月替わりで作る「野の花工房」の石窯パンは、こちらで購入することができます)
- fin.
- わが屋の「石窯料理」ことはじめ
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「石窯に向いているのは『失敗も楽しめる人』だと思います。マニュアルがない石窯を扱いながら、自分自身でマニュアルを作る過程を楽しめる人。まずは、おいしい石窯パンを召し上がってみてください。それから、石窯でパンを焼くとはどういうことなのか考えてみてください」
心の準備ができたら、石窯を使った料理の体験教室を探してみるのも良さそうですね。個人向けに石窯づくりの本や、簡単に組み立てられる石窯キットも販売されていますよ。