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元農林水産大臣・衆議院議員/中川 昭一
皆さんは、日本の食料自給率が40%を切っている現状をご存知でしょうか。
現在、世界中で8億人を超える人々が飢餓や栄養不足で苦しみ、明日の食べ物にも事欠く状況におかれています。我が国では、お金さえあればいつでもおいしく贅沢な食べ物が手に入ることが当たり前となっています。「もったいない」という心が薄れ、大量の食べ残しや食品の廃棄が発生しています。
この状況の中で、今すぐ私たちができること、それは、食べ残しをしないこと、減らすことです。そのためには、農林漁業体験など様々な体験活動を通じ、食が様々な人々の様々な活動に支えられていることを実感し、食に関する感謝の念や理解を深めることが大切だと考えます。
今回の「最後までおいしく食べきろう!食べ残し0キャンペーン」を通じて各家庭で意識を持って、「買いすぎ、作りすぎに注意して、食べ残しのないよう心がける」、「賞味期限や消費期限を気にしながら利用する」、「冷蔵庫の中身や家庭内の食材を見ながら、献立を工夫して食べる」というような各々の小さな心がけ・工夫を積み重ね、食べ残しを減らしていきましょう。
そういった皆さんの取り組みが、日本発の行動として、世界の食糧供給の安定、そして人類の未来につながっていくことと思います。
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1978年東京大学法学部政治学科卒。同年、日本興業銀行に入行。1983年に衆議院議員に初当選後、自由民主党・若手の旗手として様々な要職を歴任。1998年農林水産大臣として初入閣後、2003年経済産業大臣、2005年農林水産大臣、2006年自民党政務調査会長を歴任。また、政策集団・志帥会会長代行を務める。好きな食べ物は、地元・十勝にゆかりのあるソバ、長いも、ヨーグルト。特技はテニス。
http://www.nakagawa-shoichi.jp/
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食育料理研究家/藤野 真紀子
食べ物は、残すと「食べ残し」になり、生ごみになります。
水分が多い生ごみを燃やすのには、たくさんの燃料が必要ですし、その費用には税金が使われます。燃やすことでCO2も発生させてしまいます。日本は、自給率が39%と低いので、世界中からたくさんの食べ物をお金で買っていますが、食べ残しているということは、食べきれないくらい買って、捨てていることになります。
なんと!もったいないことでしょう。その上、「食べ残し」は、食べ物を無駄にしているばかりでなく、生産者の苦労を踏みにじることになってしまいます。
食べる量だけ買い、食べる量だけ作る。
買い過ぎない、作り過ぎない。この点を一人一人が意識して皆で気をつければ、「食べ残し」をぐっと減らすことができると思います。
環境に大きく影響する「食べ残し」を減らすために、今日から皆さんもできることから始めませんか?
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食育料理研究家。夫の赴任で家族と暮らしたニューヨーク、パリでお菓子と料理を学ぶ。帰国後、お菓子と料理の教室「マキコフーズ・ステュディオ」を主宰。お菓子本、料理本、エッセイを数多く出版。TVや講演会、イベントなどでも幅広く活躍中。「子どものためのお菓子」(講談社)「私の好きなお菓子」(オレンジページ)など著書も多数。
http://www.makikofujino.com/
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是食キュリナリーインスティテュート/棚橋 俊夫
私は内でも外でも御食事を頂くときはできるだけきれいに平らげるように努めております。ところがときには、食が進まずどうしても食べきれないときもあります。そんなときは、まず、申し訳ないと心で詫びます。そして、持ち帰れるか尋ねます。それが叶わぬときは、皿や鉢のなかの残ったものをできるだけ綺麗にまとめます。
肝心なことは、そのときの気持ち。
つくり手に対し、お給仕に対し、お百姓さんに対し、素材に対し、大自然に対し、お天とうさんに対し感謝の気持ちを常に持ち続ける事が尊いのです。その気持ちがあれば所作も食べ方も自然と綺麗になり、美しい自分になれると思います。私たちは生きているのではありません。多くの尊い生命のお陰で(あえて犠牲とは申しません)生かされているのです。我々はトマトひとつ作れないのです。素材や料理と正しく向き合い両手を合わせて、ありがとう、いただきます。そして、ごちそうさまです。
このような世界に誇るすばらしい食文化がどの家庭、お店にも見受けられたのです。
文化とはひとりひとりの意識の継承です。
先人に大いに学びましょう。 -
1960年、熊本県生まれ。筑波大学で農業経済学を専攻。27歳から3年間、滋賀県大津市の禅寺「月心寺」の村瀬明道尼のもとで修行。1992年、表参道に精進料理の店「月心居」を開く。2007年12月に閉店。2008年2月、「是食(ぜくう)キュリナリーインスティテュート」を立ち上げ、「21世紀は野菜の時代」と信じ、精進料理をとおして野菜の素晴らしさや心身共に豊かな生活を提案するため、国内外で意欲的な活動を続けている。著書に『精進SHOJIN-野菜は天才-』(文化出版局刊)がある。
http://zecoow.com/
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ビオファームまつき代表/松木 一浩
「食」というものを人生のメインテーマとして生きるようになって見えてくるものはいろいろある。
ひとつは、この国の食糧自給率の問題。
誰もが知っているように国内自給率は4割にも満たない。
6割を輸入に頼っているというのに、その3分の1が食べ残しとして廃棄されている。遠い国から限りある石油資源を使って輸入し、廃棄している飽食大国ニッポン。いや、飽食というよりもはや放食である。
おばあちゃんに言わせれば「いつかきっとバチがあたる」。廃棄する食糧で何万人の飢餓に苦しむ人たちを救えるのだろうか?
有機農業をはじめてこれだけはやりたくない……と思って貫いていること、それは生ゴミを焼却ゴミとして出すこと。 家から出る野菜クズは米ぬかなどの有機物で発酵させて畑に還元している。
ささやかなCO2削減だが自然に対してバチ当たりな生き方はしたくない。このままこの国が飽食を続けていけば、きっとバチがあたる日が必ず来る。
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1962年長崎市生まれ。ホテル学校を卒業後、名古屋、東京のホテルにて主にフランス料理のレストランサービスを担当。90年渡仏し、パリの某ホテルに2年間勤務。帰国後、銀座のフランス料理店支配人を経て、恵比寿にオープンした「タイユヴァン・ロブション」に給仕長として4年半勤める。1999年、突如、有機農業行の道に進むことを決意、栃木の農業塾で一年半研修後、2000年、静岡県芝川町に移住し現在8年目に突入。著書に『ビオファームまつきの野菜レシピ図鑑』(学研刊)がある。
http://www.bio-farm.jp/
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株式会社グッドテーブルズ代表取締役・農産物流通・ITコンサルタント/山本 謙治
「陽がまた昇るように、たべものもどこからか供給されるさ」と思うのはもはや間違いだ。日本で食糧を生産している人の多くは60歳以上。高齢化が進み、どんどん減っている。
それでもまだ食材は溢れていると思うだろうけど、まだ日本に「たんす貯金」があるだけのこと。これから徐々に「あれ、今までは安い値段で買えたのに……」と不自由な思いをする機会が増えてくるはず。
生産の現場からみれば、これは「予言」ではなく「事実」なのだ。こんな状況を招いた一因は、私たち消費者にもある。
まず、楽をして外食や加工食品ばかり、しかも安いものしか買わない。そうなると、輸入品をベースにした食品ばかりとなるので、国内の生産者は生きていけない。しかも冷蔵庫で腐らせる!
「地球に優しい」とか「エコ」と口にする前に我々にできること。それは、加工度の低い素材を買って、家で料理をしてご飯を食べること。もちろん、残さない!
実はこれが最も日本の食を豊かにする解決法のひとつだ。
ぜひ今日から始めてみよう! -
1997年4月野村総合研究所入社。00年5月ワイズシステム株式会社入社し、青果物B2B部門の立ち上げ後、ソリューション事業農産コンサルティングマネージャとして、産地の商品企画・開発、マーケティングコンサルティングを実施。04年5月株式会社グッドテーブルズ代表取締役就任。現在、農産物流通の戦略コンサルティング、食品商品開発・販売手掛ける。近著に『やまけんの出張食い倒れ日記 東京編』(アスキー社刊)『実践 農産物トレーサビリティII』(誠文堂新光社刊)がある。
http://www.goodtables.jp/
※この記事は、2008年7月の取材に基づいて構成したものです。