vol.4 農家のこせがれネットワーク主催の「丸の内朝大学」農業クラスにうかがいました
今、日本の未来を背負って立つ30代が中心となって、食を支える農の世界を変えようとしています。日本の一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業に—。同じ志をもつ仲間が集まって、2008年から活動を本格化させた「農家のこせがれネットワーク」。彼らが、週1回朝、都心に勤める社会人を対象に行う講座「丸の内朝大学」の見学にうかがいました! 今回2期目となる農業クラス開講初日の様子と、農家のこせがれネットワーク代表・宮治勇輔さんのお話です。
- この方にお話をうかがいました
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農家のこせがれネットワーク代表 宮治勇輔(みやじゆうすけ)さん
慶應義塾大学総合政策学部卒業後、株式会社パソナ入社。複数の新規プロジェクト立ち上げに従事して退職。実家の養豚業を継ぐ。2006年、株式会社みやじ豚設立。独自のBBQマー ケティングにより2年で神奈川県のトップブランドに育てる。2008 年農林水産大臣賞受賞。新たな取り組みとして日本農業変革のために農家のこせがれネットワーク設立。一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にするために活動中。
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- 丸の内朝大学・農業クラス2009年7月14日、会場の新丸の内ビルに行ってきました
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都心で出勤前の時間を活用して、農業や農家について学ぶ「丸の内朝大学」農業クラスの第2期初日。早朝にも関わらず始業時間の7時30分には参加者41名が出席。その8割以上が20〜30代を中心とした女性、2割弱が男性です。第1期卒業生のなかには、本格的に農業に取り組みはじめた人もいるそう。「参加者の7人に1人が農家のこせがれ。第1期は、男女半々で年代もバラバラ。今回は、前回参加できなかった女性が手ぐすね引いて待っていたようです(笑)。予約開始からの2日間で定員になりました」
農業に関心はあるが時間がない人々も交通アクセスが良い丸の内なら、と積極的に参加。 「金融危機や食品偽装問題が起こったことで、今の暮らしや仕事に疑問を感じている人が多いと思うんです。そういう人が農業に対して非常に興味を持っている。これはブームではないんです。本質というか、ゆりもどしだと思います」
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「都心のビジネスパーソンは情報に敏感。だからこそ、農業に関する誤解を除き、我々がリアルな情報を伝えていきたいですね。世にある農業塾は、農業経営者向けの経営や法律、コンサル的な話を行うことが一般的ですが、我々は裾野を広げて農業の基礎をお伝えします。目標は農業プロデューサーを増やしていくことで、それとは直結しにくいかもしれないけど、地方にいなくても東京でできる、何らかの形で農業に関わっていく人が生まれるかもしれません」
全8回(番外編の交流会兼BBQを含めて9回)の講座では、農家のこせがれネットワークのメンバーをはじめ、実際に新規就農した人・家業を継いだ人・転職した人・女性など、都市近郊で就農した若手農家が講師を担当。豚・米・有機野菜・お茶と原木しいたけ・パーマカルチャーなど、各自が専門とする分野の農業知識と経験をもとに「生の声」を伝え、農家の等身大の姿と仕事を知ることができる内容となっています。また講座内でのグループワークやネットを活用した連絡網を取り入れて、世代や職種を超えて同じ目標を持つ仲間と交流しやすい環境を提供している点も大きな特長です。これから食や農に関わる仕事に取り組みたい人にとって、座学に留まらず、実際の一歩を踏み出すための勇気と活力が得られる場となりそうです。
- 農家のこせがれネットワークがめざすこと日本の農業をまじめにポジティブに考えよう
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潜在的な就農希望者を育成し農業へ戻し、耕作放棄地をよみがえらせることで、これからの農業標準をつくる「REFARM」というコンセプトを掲げ活動する「農家のこせがれネットワーク」。発起人の宮治勇輔さんは、実家の養豚業を継ぎ、都市在住者に向けた独自のマーケティング&ブランディングに成功した後も、事業拡大ではなく、顔が見えるお客様に本当にいいものを届けることを目指しました。
「大企業は効率化や利潤が目標になりがちだけど、個人農家はいいものを作ることができる。規模の集約も必要だけど、日本の土地で諸外国のような超大規模農業を行うのは非現実的で、質を高めるしかない。すると家族経営という答えに行き着く。先祖伝来の土地という考え方は古いという人もいるけど、そこに誇りや自負、強いモチベーションがある。『明日は霜』と聞けば、農家はちゃぶ台をひっくり返して畑の世話に行くんです。流通や自給率の問題もあるけど、僕からみるとまだまだ可能性があるぞ!と思う。日本で農業の明るい未来や夢と希望を伝えるのが我々の役割です」
- 農家のこせがれネットワークがめざすこと 〜日本の農業をまじめにポジティブに考えよう
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一方で国内自給率の低下、輸入農産物の価格高騰などの問題から、日本の食と農が危うい状況にあることも事実のよう。「日本に農地がなくなってからでは遅い、という危機感はあります。現状多いのは、特定の地域で成功した事例を全国に波及させる流れ。でも各地域ごと、リーダーごとの得意分野、思いがある。地域によって成功モデルが違ってくるのが、あたりまえなんです。決してマニュアルではできない、経験から得る農業があります。就農希望者の方は、余暇にファーマーズマーケット出展などのイベントを手伝ってみてください。自分の頭と手に汗をかき、実際のプロジェクトに参加した経験が大きな学びになるはず。」
「生活者の方は、それらの場で、かかりつけの農家・マイファーマーを見つけてください。近い将来、農産物の価格が上がる可能性が高い。子や孫の代まで、安全安心で良心的な価格の食べものを受け継ぐためには、今は少し高いと感じるかもしれないけど、国産品を買って日本の農業を応援し、残すことが大切なんです」
- これからの農業標準をつくるために 〜小学生の希望職種ランキング1位に「農業」を!
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現在メールマガジン登録者2000人以上のうち、300〜400人が農家のこせがれ、400〜500人が農業従事者、残り約半数がそれ以外の生活者。今後はリアルなイベントを増やし、生産者と生活者が交流する機会も増やしていきたいそう。
「社会の役に立ちたい、日本の農業を良くしたいと思ったとき、僕は自分にできることをやりました。自分が経験したように、農家のこせがれが実家に戻って農業を継ぐことを支援できれば、それが最短最速で日本の農業を変える仕組みになると思って『農家のこせがれネットワーク』という名で活動をはじめました」
「農家のこせがれネットワークは、みなさんのためのプラットフォームです。地域で語り合える仲間や同士とのコミュニティを提供します。世界に誇れる豊かな食文化を取り戻し、将来、自分のこどもに農業は素晴らしい仕事と胸をはっていえる農業をつくっていきましょう。そのためにも、今は全国を飛び回ってネットワークづくりに力を入れたいと思っています」
- fin.
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3月7日に東京で行われた会を皮切りに、仲間と出会いディスカッション等を行う「設立決起集会」の全国行脚を開催中。 2009度中に、東北・北海道での開催が決定しているほか、東海・北陸など未定の地域でも開催者や当日の運営スタッフを募集。 詳しくは「REFARM」webサイトをご確認ください。
※この記事は、2009年7月の取材に基づいて構成したものです。