ショコラの展示会といえども、ファッションショーあり、巨大ショコラオブジェやカカオ入りの化粧品あり!とサプライズ感と徹底したオシャレ感は圧倒的で、日本での見本市とは別物です。芸術性や技法を競いあい、趣向を凝らした演出で話題性を創出している様子が、さすがはフランス!食品輸出が重要な国家戦略の国だと実感します。来場者は約14万人、参加するショコラティエとパティシエは約400人、そのうち200人は国外からの参加で、まさに国際見本市です。
会場は一般とプロ対象にフロアが分かれています。一般会場の方にはショップがたくさん出店していて、美しく美味しそうなショコラが所狭しと並んでいます。行列しないはずのフランス人も押すな押すなの大混雑。「デギスタシオン?(味見)」を連発して買い物三昧です。さながら伊勢丹のサロン・ドゥ・ショコラのような風景で、美味しいものに群がるのは万国共通なのですね。ファッションショーに出展される作品を着たマネキンやチョコレートでできた凱旋門もお出迎え。まさしくお祭り騒ぎです。
一方プロ対象のフロアの方は、チョコレートを作るためと売るために必要な材料、包材、器具機械、インテリアなどが「ここは美術館?!」と思わせられるようなアート感覚満載の演出あふれる空間に展示されています。
一角では、ショコラティエの技術向上のためのセミナーも連日行われていて、日本人ショコラティエも講師として招かれていました。多くのフランス人ショコラティエを前に日本人ショコラティエがその高い技術を披露している様子は、ちょっと誇らしい気分でしたよ。
サロン・デュ・ショコラではフランスのショコラ愛好家クラブ「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ(le Club des Croqueurs de Chocolat)」により、ショコラ賞(Les Awards du salon du chocolat)が発表されます。
レストランガイドのミシュランが星の数で評価を表すように、こちらはタブレット(板チョコレート)の数が目安。最優秀ショコラティエには5タブレットが与えられます。プロだけではなく一般のショコラ好きも毎年誰が選ばれるのか、興味深々だそう。
今年(2011年)はファブリス・ジロット、ヴァンサン・ゲルレ、パスカル・ル・ガック、ジャン・ポール・エヴァン、ピエール・エルメなどの前年からの顔ぶれとフランク・フレッソン、ル・カカオティエ、そしてサダハル・アオキといった新顔を含めた11名と、国際部門で、海外経験を持たない日本人パティシエとしては初めて「エス・コヤマ」が「海外ショコラティエ部門」で最優秀賞に選ばれると同時に最優秀ショラティエにも選ばれて、計12名が「最優秀ショコラティエ」になりました。日本人2名が最優秀ショコラティエに同時に初選出という快挙です!!
この賞のすごいところは、レベルに達していなければ「受賞者無し」という年もあるとのことで、権威とかベテランとかに関係なく純粋に技術力が評価されるところなんですね。
カカオ豆生産国、食材の仕入先、包装のスペシャリスト、機器メーカー、学校職員や料理記者など、すべてのショコラとココアの業界人が、このユニークなイベントの下に集うことには大きな意味があるように感じました。
一方で工業用チョコレートへの懸念や、カカオ生産国との関係などがテーマの会議やイベントも開催されていて、国家戦略としての「ショコラ」を大切にとらえ、国全体で盛り上げていることに感心しました。やっぱり美食の国として世界遺産に登録されるだけのことはあるわけです。
最後に、この旅をコーディネイトいただいた内坂先生の言葉をご紹介しましょう。「フランスを訪れて、また来たい!と思う人は、フランスから愛されているのよ」