vol.62 鈴木達也さんの鶴首南京南瓜でつくった、山口はるのさんの『ほっこり南瓜のポタージュスープ』
教えてください
- 山口はるのさん(東京都世田谷区)
- 世田谷で“お野菜盛りだくさん”の簡単レシピのおもてなし料理教室“spring’ kitchen”を主宰。“寛ぎの空間+α”をモットーとするレッスンでは、最低ひとつの“へぇ”をお持ち帰り頂くと同時に、使用する調味料や食材にもこだわり、生産者様とのつながりを大切に1品1品安心安全なものを使用している。
お教えします!
- 鈴木達也さん(静岡県三島市)
- 「健全な食を地域社会とともに育み、次世代に繋げる」を理念にフードカルチャー・ルネサンスを設立し、富士山の恵み豊かな箱根西麓の地で、遊休地を再生しながら、約200品種の固定種・在来種の野菜を生物多様性を重んじた有機的アプローチで栽培。『七十二の季節を彩る』をコンセプトとした宅配や「毎日の食卓を楽しく豊かに」をテーマとした活動を通じ、食文化の醸成に取り組んでいる。
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- From:料理家
- 山口はるの
- To:生産者
- フードカルチャー・ルネサンス 鈴木達也さま
鈴木さん
厳しい寒さが続いておりますが、空気が澄んでいるこの時期は、きっといつも以上に綺麗な富士山を眺めることができるのでしょうね。
にこにこと楽しそうにお野菜たちを収穫なさっている鈴木さんの姿が目に浮かびます。今月我が家にやってくるお野菜たちはどんな顔ぶれなのか……、毎月とても楽しみです♪さて今日は私がほれこんでいる“鶴首南京南瓜”のことを、鈴木さんが力を注いでいらっしゃる“在来種・固定種”のお野菜たちのお話を交えながらご紹介して頂けないでしょうか。
現状では残念ながら市場に数多く出回ることがないけれど、“在来種・固定種”のお野菜たちの美味しさ、そしてその種を絶やさないという大切さを教えて頂けたら嬉しく思います。
はるの
- From:生産者
- フードカルチャー・ルネサンス 鈴木達也
- To:料理家
- 山口はるのさま
はるのさん、新年明けましておめでとうございます。 昨年の “野菜の種で繋がる…” のイベントでは司会進行役をありがとうございました。
寒の入りを迎え、これから小寒、大寒とまだまだ厳しい寒さが続きますが、冬至を過ぎれば “一陽来復”。春に向けて再び「陽」が兆してくる季節でもあります。こちらでは清々しい青空と富士山のもと、すでに多くの野菜が春に向け芽吹く力を育み始めていますよ!
さて、固定種・在来種の野菜について簡単にご紹介させていただきます。 固定種とは『何世代もの長い歳月に渡って自然により淘汰もしくは選抜・育種されながら遺伝的に安定した品種』、そして在来種とは、その中でも『それぞれの地域で、親から子へ、子から孫へと世代を超えて種を絶やさず守られ抜いてきた品種』の野菜のこと。伝統野菜、伝承野菜などと呼ばれる、いわば、「昔ながらの野菜」がそれにあたります。
たまたま特定の地域に渡来して、ずっとその地域のみで育て続けられてきたもの、人の行き来によって地域を渡り、その地の地質や気候に馴染んだ姿形に変わって遺伝的に安定したものなど、その歴史を辿ると奥深いものも多いです。姿形も食味・食感もそれぞれ実に個性豊かで、一般的に味が濃く風味が良いとされます。
ただ、私たち人間も個々に背格好が異なり個性豊かであると同様に、同じ品種でも形や大きさが様々で不揃いとなりやすいため、大量生産・流通には向かず敬遠され、生産量は全国的に極めて少なくなり、最近のスーパーなどの一般市場には殆ど出回らなくなってしまいました。昨今の多くは、F1(Final-1)種という、形や大きさが均一で生産性・効率性を高めるよう人為的な品種改良技術などを施し開発された、いわば大量生産・流通に好適な品種の野菜です。大量生産・流通といった観点では多くの恩恵を受けつつも、反面、その元々の品種が持つ個性が失われやすく、その野菜の種を播いても二代目は同様には育たない、といったその名のとおりの一代限りの特性を持ちます。
今回、はるのさんが惚れ込んで下さった“鶴首南京南瓜”は、愛知県や静岡県西部で古くから伝わる、鶴の首の形にその名の由来を持つ、細長いひょうたん型をした東洋種の南瓜です。繊維質が少なく粘質系で舌触り滑らか、東洋種ならではの上品な甘味にとても濃厚でコクのある風味を感じてくださったかと思います。そして、この南瓜のもう一つの醍醐味は収穫後1ヶ月程経過した後からの追熟・糖化の極みともいえる“ねっとり”感。スープを作る際、裏ごしなど必要なかったのではないでしょうか?
鶴首南京南瓜に限らず、他も溢れんばかりのそれぞれの個性を持ちます。これは、優劣ではなく個性。そして、「種」すなわち「自らの命」を繋ぐことのできる固定種・在来種の野菜は、その土地で種を絶やさず採り、育て続けていると、益々その土地に馴染み力強く育ち、本来の生命体としての逞しささえ感じます。種を絶やさず次の世代に繋いでいくこと…それは、そこに関わる地域、人、栽培手法、歴史などが脈々と繋がっていくこと。そんな、地域の生きた文化財ともいえる固定種・在来種の野菜たちが、はるのさんの料理を通じて、少しでも多くの方々に触れ、『楽しく豊かな食卓』を味わっていただけたら幸いです。
- From:料理家
- 山口はるの
- To:生産者
- フードカルチャー・ルネサンス 鈴木達也さま
鈴木さん、お返事どうもありがとうございます。
鈴木さんのお野菜たちへの愛情が伝わってくる温かい文章にほっこり幸せな気持ちになりました。
私は、人の手によって作られるものは、作り手さんの愛情によって味が左右されると思っています。
同じ種を使って同じ土壌で同じ方法で同じ野菜を育てても愛情のかけ具合によって味が変わるのですよね。
愛情をたっぷりと受けて育った野菜は、やさしい味がして絶対的に美味しい。
まさに鈴木さんのお野菜たちは愛情たっぷり!のお味がして、大好きです。特に育てるのが難しい在来種・固定種のお野菜たちをあそこまで立派に美味しく育てられる鈴木さんは本当にすごいな~と尊敬しております。
“鶴首南京かぼちゃ”のあの繊維質が少なくねっとりとした甘くて濃厚なお味は、一度味わったらもう忘れられません!!
今回はそんな特徴を生かした“鶴首南京かぼちゃ”のポタージュスープのレシピをご紹介させて頂きたいと思います。
余計な調味料は一切加えないこのレシピは、鶴首南京かぼちゃの美味しさをそのまま楽しんでいただけることと思います。鈴木さん、この度はご協力いただき、どうもありがとうございました。
鈴木さんの笑顔に会いに、畑にも是非遊びに行かせて下さいね♪寒くなります折り、お風邪など召しませぬよう、どうかご自愛くださいませ。
はるの
- フードカルチャー・ルネサンス
- https://www.facebook.com/FoodCulture.R
- ※この記事は、2015年1月の取材に基づいて構成したものです。
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