vol.60 松本明生さんの自然海塩 「小さな海」でつくった、Citronヨーコさんの『豚肉の塩釜焼き』
教えてください
- Citronヨーコさん(横浜市青葉区)
- レストラン・料理教室の勤務の経験をもとに2009年より横浜市たまプラーザの自宅にて料理教室PetitCitronを主宰。国内外、生産者さんを訪ねる旅にでかける。著書に「いつもの食材で喜ばれるスペシャル・レシピ」
お教えします!
- 松本明生さん(熊本県天草郡)
- 生きることの原点である食。そしてすべての食に結びつく塩を求め伊豆大島の日本食塩研究会に勤務。その後、こだわりの塩づくりを追求し天草塩の会を1990年に結成。小さな工房ならではのこだわりの塩作りを行っている。
- 天草塩の会について詳しく見る
- From:料理家
- Citronヨーコ
- To:生産者
- 天草塩の会 松本明生さま
松本様
お元気でいらっしゃいますか。
熊本から向かうバスから見える景色がどんどん変わり、美しい自然のある山と海が共存している天草に着きました。濃い青の海の色が、2年経った今でもはっきり目に焼きついています。松本さんが作る天草塩の会の「小さな海」。しょっぱさのなかに甘みと旨みがある塩は料理に加えると、ぐっと美味しく仕上げてくれます。一度使って以来とりこになり、今では我が家の梅干し・ラッキョウ・塩レモン・味噌、そして料理に欠かせない味となり、お取りよせをして楽しませていただいています。
日本での塩づくりは海水から作られますよね。島国である日本を囲む同じ海から作られてもお味や製法が違うように思います。日本での塩づくりは他にも見せていただき、様々な塩を使ってきましたが、「小さな海」の美味しさは格別なのです。その理由を教えていただけないでしょうか。
- From:生産者
- 天草塩の会 松本明生
- To:料理家
- Citronヨーコさま
Citronヨーコ様
お元気でいらっしゃいますか。はるばる天草の海にお越しいただきありがとうございました。あの時は山のミカン農家の方と見学にいらっしゃいましたね。山の自然と海の美しさは大きく関連しています。私が天草の地を塩づくりに選んだ理由の一つがそこにあります。天草は美しい山の自然ゆえに美しい海があるのです。海水をそのまま結晶させる。それが私たちの塩づくりです。海水をくみ上げネット式に15%まで濃縮します。そのあとは窯でじっくり炊き上げる。まずその燃料が味を大きく左右します。うちでは昔ながらの薪炊きです。そして炊き上げた後、樽で2~3日にがりと一緒に熟成させます。その後、にがりだけを自然落下させます。特別な道具を使用していませんが時間がかかっているのです。
たくさんの塩を作らないといけないとなると、手作りといわれる塩田でも燃料に灯油を使用することになります。灯油炊きと薪炊きでは味が全く違うのです。さらに塩とにがりを分ける際、遠心分離させると効率はアップします。でもここもゆっくりと自然に任せるのです。
こうして余分なものは加えず、海のミネラルを減らさず構造を替えず、そのまま濃縮したものが私たちの塩、「小さな海」なのです。1905年、日本の塩は専売制になりました。それまでの伝統製法ではなくイオン交換式という塩づくりになったのです。イオン交換式製塩ではミネラルを電気分解により切り捨ててしまっているのです。この味の違いは私たちの舌がすぐに見分けます。味噌屋・醤油屋はすぐにこの違いに気がつきました。イオン交換式の塩はミネラル分が少ないためうまく発酵が進まないのです。そうなると食品添加物を使用しなければうまく作れないということが起こるわけです。1997年に専売は解かれ、2002年から塩の販売は完全自由化になりました。
私たちの塩作りは大量生産ができません。大きくしようとすると今のこだわりの製法は難しくなるからです。一度天草の海をそして私たちの塩屋を見に来ていただければ、その想いをわかっていただけると思います。
- From:料理家
- Citronヨーコ
- To:生産者
- 天草塩の会 松本明生さま
松本様
日本における塩づくりには様々な歴史的背景がありますね。販売の自由化もつい最近のこと。私たちの舌で味わい、自由に選ぶことができるのは改めてとても幸せなことだと思います。
また、塩の価格に大きな差があることもうなづけます。人間の身体にはミネラルが不可欠ですから毎日口にする塩はミネラルたっぷりなものが体にもお味にもよいのが納得できます。ミネラルをたっぷり含んだ「小さな海」は塩味の中に甘みと旨みがあります。この味はじっくりと時間をかけて作られ、海の成分をそのまま凝縮しているからこその味わいなのですね。今回は塩の味を生かしたシンプルな料理、豚肉の塩釜焼きを作りました。肉のうまみと甘みを塩が引き出してくれた一品です。
自然の大切さ、天草の海の美しさ。1人でも多くの方に足を運んでいただけたら私もうれしく思います。貴重な話をありがとうございました。また天草に遊びに行かせていただきますね。
- ※この記事は、2014年10月の取材に基づいて構成したものです。
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