久保田酒造の「相模灘」にあわせた、料理家 入江亮子さんの「新蕎麦粉の九節板」
教えてください
- 入江亮子さん(東京都)
- 佛教大学仏教学科卒。 日本料理の五味五法五色を研究する「温石会」主宰。四季をいかした懐石を教えるほか、茶事の出張料理も行っている。 また、利酒師・日本酒学講師・酒匠として、日本酒と料理のマリアージュも数多く提案。
お教えします!
- 久保田晃さん(神奈川県相模原市)
- 1978年生まれ。京都市立芸術大学美術学部(日本画専攻) 卒。1844年創業の久保田酒造㈱・専務取締役兼杜氏。弟の徹氏(麹担当)とともに新世代の蔵元として注目を浴びている。
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- 温石会 入江亮子
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- 久保田酒造 久保田晃さま
久保田さん、こんにちは。急に寒くなってきましたね。
酒はやはり寒造り。造りの時期を迎え、早朝から仕込みの忙しい日々を送られているかと思います。昨日、近所の酒屋さんで相模灘の特別本醸造の新酒を見かけ早速購入しました。枡の隅っこにあら塩を置いてチビチビっと飲むスタイル―つまり酒のアテは塩が一番うまい―を豪語するお父さんたちがいまだ多い中、早くから「相模灘」は食中酒をうたっていましたね。実際「相模灘」を料理と一緒に飲んでみると、和食はもちろんのこと、どんな料理にも万能にはまるんです。なんというかしっくりというか落ち着きます。しかも料理単体で食べるよりおいしさを増すのです。仕事柄、たくさんのお酒を日々テイスティングして料理とのマッチングを試みますが、これにはびっくりいたしました。
静かな吟醸香が心地よく、すっと口に滑り込み、酒のうまみが料理の味にふくらみを持たせてくれる感じ・・・。
そんな究極の食中酒「相模灘」のことぜひもっと詳しく教えてください。
- From:生産者
- 久保田酒造 久保田晃
- To:料理家
- 温石会 入江亮子さま
入江さん、こんにちは。
僕が蔵に入ったのは平成14年からで4年ほど前杜氏(とうじ)について、平成18年度(※1)から杜氏として「相模灘」を造っています。蔵の歴史は古くかれこれ160年以上ありますが、僕自身はまだまだこの世界では新参者で、しかも美大出身で畑違いもいいところ。しかし、だからこそオリジナルな酒が造れたのかもしれません。当初は学んだことを踏襲し、一方で実験的なことをやっては失敗と成功を繰り返していましたが、徐々に自分ならこんな酒が飲みたいなというしっかりとした設計図のようなものが出来あがってきました。それが食中酒だったのです。やはり飲むほどに食べたくなり、食べるほどに飲みたくなるというのが私にとっては自然な考えでした。
酒の骨格やキレを出すために、丹沢山系の中硬水を仕込み水に使用しています。
米に関しては、酒造好適米の中でも比較的軟らかくうまみが出やすい米を選択し、
なるべくソフトな味わいを残すような仕事を心がけています。
さらに、大吟醸並の低温発酵をさせることによって雑味を抑え、綺麗な米のうまみ
だけを抽出します。
このように米と水のバランスにこだわり、酒本来の味を出すために、無濾過瓶囲い(※2)を行っています。今年度は蔵人も増え、5人で切磋琢磨してみなさんに喜んでいただける酒造りを行っています。
新酒の味はいかがでしたか?これからも神奈川酒の応援、よろしくお願いします。※1:酒造年度は7月1日から翌年の6月30日まで。一般的年度とは異なる。
※2:上槽後、通常は雑味などをとるため活性炭などで炭素濾過を行うが、それをあえて行なわず、さらに瓶詰め状態で一定期間貯蔵すること。
- From:料理家
- 温石会 入江亮子
- To:生産者
- 久保田酒造 久保田晃さま
仕込みでお忙しいところ、お返事どうもありがとうございます。
飲み飽きない酒の秘密はバランスだったのですね!と、一言で表現するようにはそうそう簡単に作れるものではないと思いますが、料理でもバランス、言い換えれば陰陽を重んじます。器も丸い料理には四角のお皿などに盛り付けると落ち着きます。
日本酒の味わいは非常に狭い範囲で複雑ですし、微調整が難しいのでしょうが、酒を自分の作品と考えれば、楽しいですね。「相模灘」にインスパイアを受けた私が作ったお料理は、新蕎麦粉を使った九節板(クジョルバン)。この時期だと蕪蒸しやシチューを白味噌仕立てにしたものも合うと思いましたが、最初に飲ませていただいた時に感じた植物性の爽快感を意識して野菜たっぷりの韓国の巻物を和風にアレンジしてみました。ソースは久保田さんの弟さんである徹氏の麹を使った塩麹と胡麻酢をあわせました。
今年度は新仕込み蔵で、360石仕込まれる予定だそうですね。お風邪に気を付けて頑張ってください。楽しみにしています!いつかお蔵にある茶室「無料庵」で私の懐石で茶事をやらせていただければ幸いです。
- ※この記事は、2011年11月の取材に基づいて構成したものです。
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