第47回 300年の伝統を持つ知られざるエクルズ・ケーキ
今回ご紹介するエクルズ・ケーキは
新年にふさわしい聖なるケーキのひとつ。
18世紀から発売されていた記録もある
300年近い伝統を持つこのケーキは、
昔は教会で販売され、表面にある三本の切り込みは
キリスト教の「三位一体」を表しているそうです。
300年ほとんどレシピが変わっていないというだけあり、
カランツ(小粒の種無しレーズン)にブラウンシュガー、
オールスパイス、ナツメグを加えたフィリングをパイ生地で包み、
表面にグラニュー糖をふりかけて焼いたもので、
ケーキというよりはレーズン・パイに近い
昔ながらの素朴なお菓子です。
現在はスーパーマーケットで売られているほど、
イギリス人にはなじみの深いケーキです。
「エクルズ」の名はイギリス北西部ランカシャー地方の
エクルズという町に由来しています。
ランカシャーはセミ・ハードタイプのランカシャーチーズが有名なので、
この地方ではチーズと一緒に食べることが多いそうです。
特においしいと評判なのがモダン・ブリティッシュのレストラン
「セント・ジョン」のもの。
「ブレッド&ワイン」という2号店やバラ・マーケットの
チーズ屋さん「ニールズ・ヤード・デイリー」でも販売され、
最近ではバーモンジー・ストリートのマーケットにも出店するほどの人気ぶり。
軽くハラハラと幾重にも重なったペイストリー、
なかにはスパイスの効いたカランツがぎっしりと詰まっていて、
この焼きたてのケーキの素朴で香ばしいおいしさは
300年もの間、人々に愛されてきた秘密を物語っています。