第31回 1日に3回食べたい イギリスの朝ごはん
イギリスの食事はおいしくないという偏見は
残念ながら未だに根強いものがあるようです。
そんな不名誉な評判のあるイギリスの食事でも、
1日に3回食べたいほどおいしいと名高いのが
イングリッシュ・ブレックファストです。
これはもともと著名な英文学者のサマセット・モームの言葉
「To eat well in England, you should have breakfast three times a day.
イギリスで良い食事をしたいと思ったら、朝食を1日に3回食べるべきだ」
からの引用だと思われ、これには彼一流のイギリス人らしい
皮肉とユーモアがたっぷりと込められているように感じます。
モームの生きた時代には、現在のイギリスにおける食革命は望むべくもなく、
朝食以外はいただく場所によっておいしいところと、
不味いところの当たり外れが大きかったのかもしれません。
この言葉がここまで有名になったのは、イギリスの朝食を食べた人が
「(他の料理はともかく)イギリスの朝ごはんは確かにおいしい」と
誰もが納得し、認めているという背景があるのではないでしょうか。
典型的なイングリッシュ・ブレックファストといえば、
卵料理+ベーコン、ハム、ソーセージ+付け合わせの組み合わせが一般的。
卵料理は写真のようなフライド・エッグ(目玉焼き)、ボイルド・エッグ、
スクランブルド・エッグ、ポーチド・エッグから、
付け合わせはグリルド・トマト、マッシュルーム、ベイクドビーンズ、
ブラックプディングなどから、お好みとお腹のすき具合に合わせて選びます。
保存食であるベーコン類に塩気がきいていることが多いので、
卵料理やグリルしたトマトやマッシュルームと
一緒にいただくと、塩気がちょうど良い感じでいただけます。
写真に写っているのは特に肉厚で、たっぷりした食感がおいしい
ポートベロー・マッシュルームです。
今回ご紹介するのはコッツウォルズにあるB&B、
Wesley Houseの朝ごはんです。
(ちなみにB&BというのはBed&Breakfastの略で、
基本的には朝ごはんと宿泊がセットになった
プチホテルのような形態の宿泊施設です。)
コッツウォルズのしっとりした緑と光に囲まれながら、
朝食がいただけるコンサヴァトリー。
フレッシュなオレンジジュースと共に、
まず最初にでてくるのがヨーグルト。
なめらかな舌触りでコクのあるグリーク・ヨーグルトに
ホームメイドのレッド・ベリー・ソースが添えてありました。
パンもこちらは最初に温かいクロワッサン、
次にブラウンかホワイトブレッドのトーストが出てくる充実ぶり。
ベーコンとフライドエッグの典型的な朝食もいいのですが、
それ以外にもスコットランドの朝ごはんで紹介したグリルド・キッパー、
この写真にあるミルクでポーチしたハドック、ポーチド・エッグ添えなども
イギリスの伝統的な朝食メニューです。
ミルクがタラの生臭さを塩辛さを消してくれる
しっとりした食感のタラとポーチドエッグは、
ちょっとヘビーなベーコンにフライドエッグの朝食と比べると、
もう少しお腹にやさしく、特に肌寒い日の朝には体が温まる組み合わせです。
厭世的な人生観を抱いていたモームですが、
おいしい朝食をいただく時だけは
人生に肯定的になれたのかもしれません。
朝ごはんは旅行の大きなお楽しみのひとつ。
一日のスタートである朝ごはんがおいしいと
その日1日が良い日になる気がするのです。
STORE INFORMATION
WESLEY HOUSE
High Street , Winchcombe,
Gloucetershire, GL54 5LG
44-(0)1242-602-336