プロ料理家365名によるプロのレシピ4812

第三回 「とびきりのクロテッド・クリームを求めて イギリス」

イギリスで食べてみたいものと言えば、必ず名前が挙がるのがアフタヌーン・ティー。そのアフタヌーン・ティーに欠かせないものと言えば、焼き立てのスコーンとたっぷりのストロベリー・ジャムと一緒にいただくクロテッド・クリームです。

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クロテッド・クリームは、脂肪分の高い牛乳を、弱火で煮詰めたものを一晩おき、表面に固まる脂肪分を集めて作られています。イギリスの規格では、生クリームより高くバターより低い、最低55%の乳脂肪分が必要とされているのですが、そのため、「牛乳本来の持つおいしさ」をギュッと凝縮した、クリーミーでとてもリッチな味わいが特徴です。

昔から質の高いミルクが採れることで知られる、イギリス南西部デヴォン州発祥の伝統的製法で作られているこのクリーム。そのためデヴォンシャー・クリームと呼ばれています。隣のコーンウォール州でも作られているため、そちらではコーニッシュ・クリームと呼んでいますが、製法はほぼ同じで、このクリームの総称のことをクロテッド・クリームと呼んでいるようです。

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「本当のクロテッド・クリームはデヴォンにあり」と、とびきりのフレッシュなクロテッド・クリームを求めたどり着いたのは、ここデヴォンにある「リフトン・ストロベリー・フィールド・ファーム・ショップ」。他に何もないのどかなカントリー・サイドに突然現れる、ストロベリー・マークが目印です。ファーム・ショップ内でも食べられますが、気候の良い夏は赤いパラソルの下のテラス席がお薦めです。

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イギリスのティー・プレイスのメニューによく登場する「クリーム・ティー」は、スコーンにジャム、クロテッド・クリームにお茶がセットになったものです。こんなカジュアルなクリーム・ティーにも、きちんと紅茶用のさし湯のポットが付いているのは、さすが紅茶の本場イギリスらしいですね。

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糖分が高いために表面が凝固している部分があるのがお分かりになりますか?
これが生産工程の途中でできるクラスト(Crust)と呼ばれる部分で、クロテッド・クリームの語源、Cloutはこのクラストに由来すると言われています。
このクラストがあるのが、本物のクロテッド・クリームの証。こちらの蜂蜜色のクリームは、濃厚で豊かな味わいなのですが、決してべたつくことなく、口の中でスーッと溶けていくので全くしつこくありません。いくらでもいただけてしまう、危険なクリームなのです。色々な場所で今までクロテッド・クリームをいただきましたが、こちらのとびきりフレッシュでこくのあるクロテッド・クリームは他のものとは比べようがありません。

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ファーム・ショップの名前通り、野菜も肉類もすべてここで採れたもの、または契約農家のものを使用。卵は放し飼いのもの、肉はFABBL認定とクオリティにもこだわりがあります。写真のビーフ・パイはここのお薦めメニュー。柔らかく煮込まれた牛肉の素朴な味わいに素材の持つ力強さを感じます。こんな気取らないシンプルなメニューにこそ、イギリス料理の本来のおいしさが表れているのかもしれません。

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さらに忘れてならないのは、イングリッシュ・サイダー。日本ではシードルという名前の方がポピュラーかもしれません。りんごの爽やかな香りが夏にぴったりの飲み物ですが、意外にアルコール度が高いので、お酒の弱い方はご注意くださいね。

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店内のヴィクトリアン・オーブンで毎日焼かれるホームメイドのパイやパン、スコーンの香ばしい香りがいっぱいです。こんな風にかごに入った無造作なディスプレイはカントリー・サイドならでは。

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ラップに包まれた、手作り感いっぱいのトラディショナル・ケーキたち。レモン・ケーキ、デーツ&ウォールナッツ・ケーキ、キャロット・ケーキ、ボイルド・フルーツ・ケーキなど、ホームメイドという言葉そのままのイングリッシュ・スイーツが並びます。

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この時期はPYO(Pick Your Own)と呼ばれる、日本で言うならいちご&ラズベリー狩りのシーズン。日本のビニールハウス内に収穫があらかじめ用意されたいちご狩りと違い、とても自然に任せたイギリスのPYO。日本のように簡単に大収穫とはいかないようです。

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時期もいちごは終わりに近づいていたこともあり、収穫はこれくらい。甘酸っぱい、自然ないちごの味がしました。

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そして最後にデヴォンと言えば忘れてはいけないのがアイスクリーム。乳製品がおいしいところでは、当然アイスクリームもおいしい。

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イギリスらしいフレーバー、チョコレート・チップとミントを選びました。良質な乳製品から作られた、昔ながらのアイスクリームの味です。

地元の人々で常に賑わっているこのファーム・ショップ。人気の秘密は、良質の素材が持つ豊かな味わいを生かした、奇をてらわない、イギリスの伝統的な料理が味わえることでしょう。クロテッド・クリームをはじめてとして、ブリティッシュ・フードの持つ「シンプルで豊かなおいしさ」を発見した、今回のデヴォンの旅でした。

STORE INFORMATION

Lifton Strawberry Field Farm Shop

Lifton,Devon,PL16 ODE U.K.
Tel: 44-(0)1566-784605
www.liftonstrawberryfields.co.uk/

小松喜美さん写真

フード・ジャーナリスト 小松喜美

イギリスをメインにヨーロッパの魅力を食と文化の視点から紹介するフード・ジャーナリスト。料理・菓子は「ル・コルドン・ブルー」やパリの「リッツ・エスコフィエ」で学んだ経験をもとに、「食べることは生きること」を信条として、日々おいしいものを探究する日々をブログや雑誌媒体のメディアに掲載しています。

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