« 2015年6月 | メイン | 2016年4月 »

2015年11月 アーカイブ

2015年11月 1日

人間のスケジュールに合わせるのをやめたよ


11月1日から3日間、テッラマードレジャパン2015
私の地元十勝で開催されています。

20151101.jpg

テッラ(地球)+マードレ(母)で「大地を作る人」を意味し、

たくさんの生産者や学生、食に関心・興味のある方が参加して、
学び、気づき、体験のプログラムが提供されます。

私はその中で味覚教室を担当するのですが、
今日、大地を耕す人である生産者・大石農産の大石富一さんとの会話の中に、素晴らしい気付きがありました。


「僕はね、人間のスケジュールに合わせるのをやめたよ」と、
大石さんはおっしゃるのです。


農業と資本主義は相性が悪い、
企業の農業経営は難しい等とよく言われますが、

実際に消費者である私たちはその言葉を頭では理解できるけれど、
真意まではピンとこないのが事実です。

でも、この言葉を聞いて「なるほど」と理解できました。

私たちは普段、様々なスケジュールにのっとり仕事や生活をしていますが、
農業は人間のスケジュールではなく
大地や自然、作物のスケジュールで生きねばならない
んだ...と。

私たちフードソムリエは、
生産者さんの発する一次情報により近い、
二次情報発信者でありたいと常に思っています。

目指すべきはこういう情報ちゃんとキャッチして発信することなんだ!ってしみじみ思った夜でした。

2015年11月11日

池田ワイン&北海道ホテルランチ♪タクシーの旅

普段、あまりお酒を飲めない私は、いつも運転手。

でもね、地元のワインをもっと知りたい!と思って、
先日北海道宝島トラベルさんのプランで、タクシーで行く池田ワイン城に行ってきました。

旅の友は、いただきますカンパニーという畑のガイドツアーを行う会社の井田ふみこちゃん。旧知の仲ですが、こんな風にプチ旅行するのは初めて♪

よーし飲むぞ―!!と、ぶどう畑の前でパチリ


002.JPG

このぶどう畑は、池田町がワインづくりを始めた時からある畑なのだそうです。山のふもと、ずらーっと並ぶぶどうの木々。

001.jpg

ついたらまずはこれでしょ♪
樽ガールになれる記念撮影をば♡
004.JPG

遊んでばかりいないで、ちゃんとお勉強もしなきゃ...ということで、
池田ワイン城のストーリーとワイン造りのお勉強コーナーへ

005.JPG


北海道の自然は過酷です。
この日は、初雪が降った日だったのですが、
池田ワインの始まりは「冷害」だったと聞いています。
2~3年続いた冷害で、思うように畑の農作物の収穫がなく農家が疲弊する中、山にあった「やまぶどう」は実をたわわに成らせていたそうです。
「これを育てればよいのではないか?」と考えた町長が音頭をとり、
スタートしたのが、この池田ワインなのだそうです。

子供の頃から身近にあったワイン城ですが、裏にそんなストーリーがあったんだなぁ...。

今は随分と暖かくなってきた北海道ですが、昔は本当に寒くて
子供の頃は通学だけで足にしもやけが出来るほどでした。

沢山の方の想いがつながって、今もこの地にワイナリーがあるんだと思うと
感慨深いものがあります。


さて、いよいよ、本日のメインである「ワインの試飲」へ
ここでは、3つのワインが選べる有料試飲がなんと700円!!(税込)
これに、チーズとベーコンのおつまみも付きます。
今回、私たちは2人だったので、飲み比べセットを2つ頼み、
全部で6種類を飲み比べ。

006_1.JPG

このコーナーでは、担当の中川さん(優しくてダンディ&フラットで豊富な知識をお持ちです)が、丁寧に説明してくれます。
非常にお詳しいので、色々と聞いてみることお勧めいたします♪

007.JPG

例えば代表的なワインは、
池田で作られた寒さに強い固定品種「清見」を100%使用した「清見」。

また今回飲み比べをした山幸、清舞は、
♂山葡萄×♀清見種の掛け合わせで品種としては兄弟ぶどう。

今現在はそれぞれ固定品種となり、そのぶどうで作られたワインが楽しめます。

山幸は山ブドウのスパイシーさが強めのワイン。
清舞は酸味のバランスが良い感じ。
同じ交配でも味がこんなに違うんだな~面白いな~と飲み比べしてきました。

また、数種類のブドウがミックスされたセイオロサムやシャトーは、
味が複雑でいろんな香りが楽しめます。

飲み比べすると味の違いがわかって本当に楽しく、好みの味をみつけられます。


ここでは試飲やお買い物だけでなく、
地下の熟成庫は見学ができるようになっています。

ひっそりと静かに樽が並ぶ不思議な空間です。

008.JPG

何年も眠っているビンテージワインたちも
009.JPG

自分の生まれ年のワインがあるかしら?と探しながら、静寂が漂う熟成庫でゆっくりワインと一緒に語り合いたい...
なんとなくそんな気持ちになる空間でした。


ところで、ワイン城の中には池田の観光協会があります。
ここに行くと、色々な地域情報や美味しいお店などの案内もしていただけますので、
池田のワイン城に行かれた方はぜひとも立ち寄られることをお勧めします。

それから、どこにでもあるような品が並んでいる売店が多い中、
池田ワイン城の売店には意外と地元のモノが多く売っていますのでこれも必見です。

012.JPG


観光協会の前のショーケースには、色んな著名人のサインがかかれたボトルが展示してありました。
うわぁお!ポール牧師匠のサインも!

011.JPG


ワイン城を後にし、ぶどう畑や十勝の農村風景を眺めながら、
タクシーで30分走り、北海道ホテルへ♪

森のスパリゾート北海道ホテルでは、
ガーデンが眺められる「バードウォッチカフェ」でシェフのスペシャルコースのランチ。
メニューはこんな感じですよ。
昼間からお腹イッパーイ♡

013.JPG

もちろん、十勝ワインのラインナップも

014.JPG

お味はこのふみちゃんの顔をみていただければ♡ ねっ♪

015.JPG

4時間のショートトリップ♪

飛行機までに少し時間があるわ...とか、
夜はしっかり屋台で楽しみたいわ...という方に
好みが見つけられて知識も身につく、ピッタリのおすすめコースです。


食べるとは何か?

生きることは食べること。
命をいただくこと。

この言葉がいろんな場面で使われるようになってきたように思う。

私は生産者の一次情報を
良質な二次情報として発信したいと思っている一人だ。

時々、素人ゆえに生産者の方に無理なお願いをすることもある。

「去勢するところを見たいのです」

この言葉に本気で答えてくれたのが
十勝清水で十勝若牛を生産する「表牧場」さん。

私がお願いしても、誰もが「またまた~」とか「何言ってんの~」と軽くいなされちゃうことが多いけれど、表牧場の表裕一郎くんだけは「いいですよ、連絡します」と言ってくれた。

そして、去勢当日の朝
「今日の午前中にやります、来ますか?」と連絡が。

朝から打ち合わせが入っていた...。
でもこの機会を逃したくない。
打ち合わせを30分で切り上げ、急いで十勝御影にある表牧場へgo
少しスピードもオーバーしていたかもしれないが、私の頭の中もかなりオーバーヒート気味だった。

どんな形式でやるんだろう、
牛は暴れるんだろうか
その時、私はどんな気持ちになるのだろう...

運転しながら複雑な思いが続く。

到着してみると、既にこの日62頭の去勢予定だったのだが2/3は終わっていた。
「あ~、こっちこっち」と裕一郎くん。


003.JPG


強面の表パパには「あんなぁ~、高いよ~」と言われ、
なんだかちょされると(北海道弁で、いじられるの意味)、
少し親しくなってきたような気がして嬉しい。

さぁ、いよいよ去勢を見せてもらう。
この小さな囲いの中に、やさしく追って1頭ずつ入れていく。

決して引っ張ったり、押したりはしない。
ここからは危ないよとまるで両親が手を広げて子供を守るかのようだ。
(カバディみたいにも見えるw)

WAKA_002.JPG

表牧場の特徴は「哺育技術の高さ」と言われている。
確かに、いついっても牛たちはとても綺麗でピカピカしている。
十勝若牛は通常のホルスタインが20か月出荷なのに対し、
14か月齢で出荷するから、実は子供の頃に病気や瑕疵があると取り返しがつかない。

だからこそ、哺育に力を入れているし、愛情深い。
表くんのお父さんはちょっと怖いけど、愛がイッパイだ。

さて、いよいよ去勢。
袋を切って、玉を2個取り出し、先がかぎ状になっているドリルのようなもので、精管(っていうのかな?)をくるくる...と巻きつけて切り落としていく。
終わったらヨードチンキを付けて終了。

ちなみにフリーマーチンの牛は、乳首を切る。
「メスとして出荷する悪い親父がいるからよー、一目でわかるようにこうなっちまったんだよ。切る必要ないのに可哀想だよな」とは、表パパの言葉。

WAKA_004.JPG

ほとんど出血もないが、最初に見た1頭はびっくりしたのかウンチをしてしまった。
下記は取り出したばかりの睾丸。軍手は色んなものにまみれている。


WAKA_005.JPG

最初の一頭の去勢を見た時に、私の頭の中は驚いたことに「無」だった。
そして、じんわり込みあがってきた感情は「感謝」だった。
「ありがとう」この一言がポロリとでた。

そして、そのあとはずっと彼らを応援していた「ガンバレ―」「ガンバレ―」と。

そのことを裕一郎くんに伝えると、
牛の人生を考えるとそうなりますよね、と言われた。

私は人間というカテゴリーにいる自分の傲慢さを思い知った。


去勢が終わった後の牛たち。
WAKA_007.JPG


彼らの睾丸をいくつか貰って帰ることにした。
食べてみようと思ったからだ。

WAKA_010.JPG


WAKA_011.JPG

WAKA_012.JPG

外の皮を2枚むいて、食べてみた。
色んな想いは除くとしても、とっても複雑な味がした。

ありがとう、感謝してます。

2015年11月27日

職人の美意識


子供のころからお肉が大好きで、
好きすぎるあまり、小学生のころは同級生のお肉屋さんに入りびたりw

DSC_6416.JPG

母親はいつも私に
「あなたの夢はお肉屋さんに嫁に行くことね」と言っていました。

私は「ママったらなんてナイスなことを言うんだろう」と思って過ごしたわけですが、残念ながら、その夢はかないませんでした。

しかし最近は、幸せなことに
いろんなご縁でお肉に近いところで楽しい思いをさせていただいております。

私の仕事は「一次情報を、良質な二次情報として発信すること」なのですが、肉の世界はあまりにも奥深く、なかなかこのことに近づくことができません。

先日、京都きたやま南山で行われるイベントの開始前に、
サカエヤの新保社長がお肉を捌くというのです!

サカエヤさんといえば、肉好きならだれもがその名を聞いて舌なめずりしちゃうお店。プロフェッショナルの世界ですから、これまで何度お願いしても、素人の私に肉を捌く姿を見せてくれることはありませんでした。

でも、なんの気まぐれか、この日は「朝から当日のイベント用の捌くから~見に来てもいいよ」と。
この機を逃してはいけない...と、朝早く新幹線に乗って出かけ、
午前中その捌きを見せていただきました。

この日は、サカエヤさん以外に、ル・キャトーズイエムのしげさんもお肉をさばきます。
楽しそうですねぇ...。
DSC_6397.JPG

その横には、「きたやま南山」の楠本社長の息子の了平くん(サカエヤさんで修業中)と、南山の店長である岡田くんがアシスタントにつきます。

DSC_6415.JPG

DSC_6419.JPG

お肉をさばく様子をあまり見たことがない私にとって、
新保社長の肉さばきは本当に見事で、すっかり見入ってしまいました。

DSC_6439.JPG

それはまさに「技」であり、「経験の塊」。

骨の形を把握し、筋の流れを見て、滑らかに包丁を入れると、肉の重量や流れ(?)を使ってするすると滑るように、パーツに分けていくのです。

もし、このお肉たちに痛点があったとしたら、きっと痛くはなかっただろうなぁ...。「何があったかわからないうちにブロックになっちゃったなー俺たち」なんて思っているだろうなぁ...そんな風に思ったら面白くて一人でクスっと笑ってしまいました。

まるでパズルのよう。
いや、パズルというのはなんだか表現として違っていて、

少し離れて見ていると、
その姿はオーケストラを指揮しているコンダクターのようで、
音楽が聞こえてきそうな、そんな感じなんです。

新保社長の手の先に握られた包丁は、もうすでに包丁ではなく、
手の延長で、私にはまるで羽のように見えました。
刃先まで神経が通っている感じ...。

まるで白鳥が翼を広げて、水辺を滑るかのよう。
見ているというより見とれてしまったというのが正解ですね。


DSC_6428.JPG


何もわからない私ですから、
率直に感想を伝えたら「もっとうまくなりたいんだけどね」と言われました。

うん、そうそう、そうなんだ。
職人さんって技術が高ければ高いほど、みんな同じことを言う。
仕事が美しくて無駄がない、そのうえでまだ成長半ばだとおっしゃるのです。

こういう方に出逢うと、どんな哲学なのか、どんな美意識なのか...とついつい考えてしまいます。
次は是非とも、インタビューさせていただきたいと思っています。

でもね...きっと断られ続けるだろうから...、3年後くらいかな?(笑)

フードソムリエTOPへ

東京スタッフBLOGへ

プロフィール


北村 貴(taka)
フードソムリエ代表


20年間の東京生活を経て、
2004年12月、真冬に
故郷・北海道十勝へ戻る。
よく食べ、よく遊び、よくしゃべる。
特技は四葉のクローバー探し

food-sommelier.gif

About 2015年11月

2015年11月にブログ「スタッフBLOG from Hokkaido」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2015年6月です。

次のアーカイブは2016年4月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページも見てください。

MovableType