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食のプロSTORY
VOL.1<前編>チーズ職人・白糠酪恵舎 井ノ口和良氏

「僕のチーズは深化する」

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「深く化ける」と書いて「シンカ」すると読むんだ。

1つの事を深めることこそが職人の仕事であると井ノ口氏は語ります。

北海道の東、釧路市にほど近い町・白糠(しらぬか)町。
酪農、漁業、林業を主産業とする人口1万人の町。

山と川に挟まれた敷地に建つチーズ工房・酪恵舎では、

毎日400リッター程の乳から、
モッツァレッラ、リコッタなどのフレッシュチーズや、
料理に愛用されるマスカルポーネ、ロビオーラ、
そしてハードタイプのモンヴィーゾなど・・・。
北海道では珍しいイタリアタイプのチーズが作られています。

どうしてイタリアタイプを?とたずねると

「料理に使われるのは圧倒的にイタリアのチーズ。
 イタリアと日本は、それぞれ素材の持ち味を生かした食・料理文化であり、
 共通する点も多い。
 生活を豊かにする食としてのチーズを作りたかった。」

中でも工房の顔となっているのが、モッツァレッラ。

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「白糠町でチーズを作ることを考えたとき、
地元の人々と色々なタイプのチーズの試食をした。
その中で誰もが抵抗なく食べられるのがモッツァレッラだった。

僕が目指すのはイタリアのチーズではなく、
この土地に根ざしたチーズだから。

これなら豆腐感覚で買いに来て、年配の方はわさび醤油で楽しめる

なるほど、確かにイタリアではバケツに入って、
昔のお豆腐屋さんのようにモッツァレッラが売られている。

ジューシーで弾力があり、かみ締めると柔らかい乳の香りが口に広がる・・。
毎日フレッシュな出来立てを楽しめる
白糠町の人たちは、なんて贅沢なんだ、羨ましい・・・。

「基礎ができていないのに、
応用をやろうとする人が多すぎる

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初めて平凡社の「チーズ工房」という本を片手に
モッツァレッラを試作したのは、今から10年以上前のこと。

「自分の作るチーズの良し悪しすらわからなかった」と当時を振り返ります。

とにかくいろんなチーズを片っ端から食べた後に、
やっぱり我流じゃダメだとイタリアへ。


「基礎ができていないのに応用をやろうとする人が多すぎるんだよ」そう語り始めると柔和な表情が一変し、眼光鋭く、厳しい口調になります。


イタリアには2度渡り、学んだ基礎をきっちりと踏んで、
教えてもらった通りにできるまでに数年。
更にトレーニングを重ねて、ようやく販売ができるようになるまでにまた数年。

今では、販売先やコンテストでも高く評価され、
雑誌、TVなど多数のメディアからも注目されるようになりました。

「プロだからさぁ、出しても恥ずかしくないチーズはできているよ。
でもさ、まだ味に幅がある。
僕は許容範囲じゃなくてピンポイントを目指してるんだな。

この味で美味しいからいいや、じゃなくてさ、
もっともっと先を突き詰めたいんだよ」

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今もまだまだ深化し続けるチーズのストーリー、後編でお伝えします。

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プロフィール


北村 貴(taka)
フードソムリエ代表


20年間の東京生活を経て、
2004年12月、真冬に
故郷・北海道十勝へ戻る。
よく食べ、よく遊び、よくしゃべる。
特技は四葉のクローバー探し

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2007年9月 3日 00:08に投稿されたエントリーのページです。

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