Breeding Spirits
7月上旬に、北海道農業研究センターのワークショップに間違えて?参加してしまった。なぜ間違いか?というと、1.育種にかかわる技術者達の集いであること。2.ワークショップは全ての工程を英語で行うため、より理解が困難なことである。
一般的なことならまだしも、生物学や植物遺伝子やでんぷん質の種類のことをたとえ日本語で言われても、”なんのこっちゃら、ちんぷんかんぷん”になるのは想像しやすいと思う。留学初期の授業で、映画のスクリーンのように英語の授業が目の前で展開され焦りまっくた時期を思い出した。
一番恥ずかしかった思い出は、”earth worm(ミミズ)”という発音を”ass-hole(ケツの穴;くそったれ"と授業で連呼してしまい注意されたことだ。私は本気だったのに・・・。発音には注意しましょう。また税関で、風薬をもっていたのに、”ドラッグ!”と言って連行されていった友人もいた。日本ではドラッグストアが当たり前だが、海外では通用しない。
話はこのワークショップのことだが、二日間にわたり育種から、加工食品への機能性やでんぷん利用加工についてと話は多義に渡った。例えば、製粉会社にとっても日本の自給率にとってもよいとされる、胚乳部分(製粉効率の良い)の多い”きたほなみ”の顕微鏡写真。左の農林61号(本州ではメジャー品種)と比べても、外皮が薄い。
ホクシンと比べても、製粉部止まりは高いようで日本の大方のうどん原料に使われているオーストラリア・スタンダード・ホワイト(ASW)に匹敵、それ以上といわれているようだ。
育種の世界は奥が深いというか、地道な作業の積み重ねだと感じた。膨大な品種の掛け合わせの中から、消費者+加工業者+製粉会社+農家と時代の背景もふまえ、あらゆる側面から次世代の小麦やジャガイモの育種をしていくわけだ。研究者の方も生涯に1品種デビューさせられたら良しとしなければならない世界だと思った。
例えばアメリカの”HRW”の銘柄には、何十種類の小麦の品種から地域や農場の土壌条件にあった小麦を播くようで、中には二品種以上を同時に混藩する例もあるとか。要はHRWの品質基準にあったタンパク値やFN値があれば良いのだという。
ということは、小麦の肌や顔(形)は当然違ってくるはず。日本では、拝見検査といって”見た目”で1等と2等とがある。硬質小麦はたいていの場合、形がいびつ(モアイ像みたいな感じ)で最初から2等とレッテルをはられる可能性もある。問題は、顔じゃなく中身の性格のはずなのに・・・・。この問題は解決することはないと思うが言ってみた。
それから、アメリカの巨大メジャー種苗会社が今後考えていることをアメリカ研究者の方に聞いてみたら、”耐干ばつ性の高い遺伝子組み換え小麦”という言葉が返ってきた矢先の農業新聞の記事。その通り、10年後にはGM小麦できてます。入ってきます日本にも。自給率14%くらいしかない我が国に選択の余地はないと思う。世界人口増、水資源枯渇による干ばつ対策は待ったなし。というのが輸出国のアンサーなんでしょうね。
その時にもまだ、国産麦を愛してやまない消費者と加工者、生産者と育種者がいればいいな~~。